« いぬかみっ! #20 | トップページ | ハチミツとクローバー2 chap.8 »

2006/08/18

生と死 その2

 中学・高校時代、私は父親が嫌いだった。
 それはきっと、10代のオンナノコにありがちな事だったと思うけれど、私の心が少し、他の元オンナノコ達よりそのことに後悔を感じているとすれば、父はそれから間も無く死んでしまった事によるものかもしれない。
 父は55歳で逝った。

 なんの巡り合わせか、その後私は4年間、父親が学んだ大学へ(場所が同じなだけで、名前も校舎もすでに違うものだけれど)通う事になった。校門をくぐるたびに、今の私を父が見たらなんというだろう、と考えた。何度も何度も。
 イナカから上京して大学に進む事を強く勧め、「金なら出してやるから」と言ってくれた父。それに反発しつづけた私。東京に出て来て、父が何を言いたかったのかがやっとわかった頃にはその父は墓の中。

 笑い話にもならない。

 それでもそうやって父を思い出す事で「私の中の父」は生きている。
 父は父が学んだ同じ校舎へ通う私を喜んでいるだろうか。
 周辺の町並みが変化した事などを、今の私なら父と笑って語り合えるだろうか。
 私が学科を選ぶ時、大学を変えるときに助言したりしたのだろうか。
 全ては死んでしまった今だからこそ思いつく「?」なのだけれど。

 同じような事は祖母達にも言える。
 父方の祖母が二次大戦中から終戦後に体験した色々を(自分からは話す事は一度もなかった)聞いておけばよかったと思えるエピソードの断片を、今になって親戚から聞いたりする。
 母方の祖母は古い家の出で、昔の風習や民俗について詳しかった。聞いておけば今の私の研究にずいぶんプラスになった事だと思う。ちなみにその本家の古い家は2年ほど前に解体され、出て来た古い文書や民具はほんのわずかを残して焼いてしまったそうだ。

 お盆の墓参りにも帰省しないような娘が、と言われそうだけれど、だからこそこうやって思い出して、いくらかでも私よりも早く逝った人たちが長く「生」を得る事ができるならば、と思うのだ。燃えてしまった文書は返らないけれど、私の中のあの人たちの記憶だけは、かすんで失われてしまわないように。

|

« いぬかみっ! #20 | トップページ | ハチミツとクローバー2 chap.8 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« いぬかみっ! #20 | トップページ | ハチミツとクローバー2 chap.8 »